近代化産業遺産 総合リスト


 
建物紹介例
<写真がここに入ります。(下は例)>箱崎宮+重要文化財の鳥居 現在の建物名称(昔の建物名称)
住所(移設の場合、旧所在地) 建築年代
構造/階層 設計者/施工者
文化財指定・顕彰(ある場合)/所有状況/
使用状況(建造当時の用途)
建物説明。(文末に参考文献ナンバー)

福岡市東区(香椎地区他)編


旧福博電気軌道馬出電停ホーム(同左)
福岡市東区馬出二丁目 明治43〜44年(1911)
石造ホーム 不詳/不詳
/03.9/西日本鉄道/交通施設(同左)
 本来バス停にはそれを示す標識が必要なだけで、このようなホームは不可解です。しかも周囲には路線バスの専用道。ここでピンと来た方は鉄道マニアでしょう。ここはもともと路面電車の専用軌道区間だったところです。
 反対側にも僅かに痕跡を留めており、周辺の街区と合わせて路面電車当時の雰囲気を色濃く遺しています。スクラップ・ビルドが著しい福岡市内にあって、このような空間は実に貴重なもので、これからも大事にしていくべきところだと思います。

西日本鉄道名島川橋梁(同左)
福岡市東区箱崎七丁目−名島四丁目 大正12年(1923)
鉄筋コンクリート造アーチ橋 阿部美樹志/不詳
選奨土木遺産/03.9/西日本鉄道/交通設備(同左)
 近代土木遺産としての美しさ、というものはたとえば打ち放しコンクリート構造物のような男性的な魅力が多いものと勘違いされがちですが、このようなアーチ構造、曲線美的なところに対するものも多くあります。
 設計者は戦災復興院総裁を務めた阿部美樹志。阿部はコンクリート工学の第一人者で、建築のみならず土木構造物にも多くの作品を生みだし、シビルエンジニアリング・アーキテクトの先駆者として偉大な功績を遺しています。(国土交通省九州地方整備局サイト.) 

旧博多湾鉄道汽船香椎駅車庫
福岡市東区香椎駅前二丁目 大正13年(1924)頃?
煉瓦造?/平屋建 不詳/不詳
2002年前後撤去/00.9/西日本鉄道/交通施設
 西日本鉄道成立前の遺構。何気なく通っていた通学路の風景としか考えていませんでしたが、博多湾鉄道汽船の社章とともに博多湾地域の近代史を語る上では欠かせない建物でした。煉瓦の構造体をモルタルで固めており、保存状態も良好であったと思います。
 今思えば、香椎近郊で最大の近代化遺産ではなかったかと思います。西鉄宮地岳線の高架化に伴う一連の工事によってあっという間に取り毀されてしまいました。福岡という都市は近代に対して無関心というか、配慮されている雰囲気がどうしても感じられません。(福岡鉄道風土記.)

ちゃんこ御島(同左)
福岡市東区箱崎三丁目 大正期?
鉄筋コンクリート造/3階建 不詳/不詳
/03.9/民間/商業施設(同左)
 九州大学正門前にあって、大学内の近代建築の雰囲気をそのまま延伸したような、なかなかに気合いを入れた建物です。建物に関する詳細ははっきりと出来ませんが、大学に合わせた商売をしている建物だと想像いたします。帝国大学の威厳を借りたような造りには、なかなか感心してしまいます。
 この建物、ちゃんこ屋さんとしてもかなり有名なようで、九州場所の前後にはお相撲力士の姿も見られるとのこと。秋頃の力士さんの姿は、私にとって実に趣深い福岡の季節を彩る光景です。

九州電力箱崎変電所(同左)
福岡市東区箱崎六丁目 大正期?
煉瓦造?/平屋建 不詳/不詳
2005年末頃撤去/04.2/九州電力/エネルギー施設(同左)
 かつては住宅街のどこかに必ずあったであろう、電気供給施設。周辺部の区画整理事業と平行するように、いつの間にか姿を消してしまいました。こういった施設はなまじ日常の一部にとけ込んでしまっているため、その価値といったところにまでは議論されず、結果どこの地域でもすぐなくなってしまいます。そんな意味では貴重な施設でした。
 モルタルでしっかりと塗り込められているため、構造こそ判別しづらいですが、意匠の具合や柱の出方から考えると煉瓦造りであると考えられます。もはや調べようのない部分ではありますが。

箱崎宮大鳥居(同左)
福岡市東区箱崎丁目 昭和6年(1931)
鉄筋コンクリート造鳥居 福岡県建築課/清水組
/00.12/民間/宗教施設(同左)
 国道3号線から見える大規模構造物。箱崎八幡宮が持つ独自の鳥居構造を活かしつつ、反りなどの威厳を持たせるための特徴を備え、現代的なアレンジを活かしているなかなかのものです。その結果、あるいは古いものとは気付かない方も多いかもしれません。
 平安神宮の大鳥居が文化財登録されているのに、こちらが登録されていないことには、少々疑問を呈します。前記の問題もあるのでしょうが、こういったところは文化財担当に根性で頑張っていただきたいものです。

旧大学湯(同左)
福岡市東区箱崎三丁目 昭和7年(1933)頃
木造/平屋建 不詳/不詳
/05.12/民間/(同左?)
 九州大学箱崎キャンパスのすぐ近くにある銭湯。大学のそばだから「大学湯」。実に安直ではありますが、それだけ帝国大学というものが地域に密着していたことをも示しています。二棟続きの構造は湿気を湯殿以外に及ぼさないための銭湯独自のものです。
 大学の周辺は古くからある学生向けアパートや下宿屋さんがあり、お風呂のないところも意外とあるようで、大学移転の第一陣まではしっかり現役で使用されてきたのですが、、、惜しくも閉店し、現在は今後どのような使われ方をするかはっきりしておりません。(大学湯閉店張り紙.)

旧福岡市動植物園門柱(同左)
福岡市東区馬出一丁目 昭和8年(1933)
コンクリート造門柱 不詳/不詳
/01.12/福岡市/静態保存(同左)
 小学校の片隅、実に不思議なオブジェが遺されています。ライト風のラインとぬっと顔を出す象。これでは何のことだか分かりません。実はこの門、元々この地にあった福岡市動植物園の正門として作られたもので、戦時中なくなった施設を今に伝えるため、現在でも同位置に保存されています。
 塀が取り除かれているため、門柱だけが浮き上がってキリンのように見えています。実際どこまでイメージしていたのかについては不明な部分であります。象のデザインはアジア風であり、ここは地域性によるものではないかと思います。

名島橋(同左)
福岡市東区箱崎七丁目他 昭和8年(1933)
鉄筋コンクリート造石張アーチ橋 後藤龍雄/不詳
選奨土木遺産/03.9/国/交通設備(同左)
 福岡市の近代化遺産ベスト3を挙げるとすれば、旧日本生命・九州大学工学部本館と合わせてこれを挙げたいと思います。白亜の七連アーチは遠くからも映えて見え、ここだけが欧州の城郭のように華やかです。
 幅員24メートルという相当に大振りな橋は、建造時に軍用滑走路説・路面電車延伸説など様々な憶測を呼んでいますがどれも定説には至っていません。この幅のお陰で自動車交通量が激しくなった現在でも同様に用いることが出来、単に先見の明があったと解釈することもよいのではないでしょうか。(国土交通省九州地方整備局サイト.)

西日本鉄道西鉄香椎駅(博多湾鉄道汽船香椎駅)
福岡市東区香椎駅前二丁目 昭和初期
木造/平屋建 不詳/不詳
2006年解体/06.6/西日本鉄道/交通施設(同左)
 松本清張「点と線」の舞台にもなった、由緒ある木造駅舎。活用のされ方及び西鉄の建造物に対する姿勢によるものでしょうが、どうもぞんざいに扱われているような感じがします。西鉄の香椎周辺高架事業が一段落し、現在使用されていない状態です。保存に対する意向などは一切示されていない現状から見て、まず取り毀しはまぬがれないものと思われます。
 福岡市はスクラップ&ビルドに対し肯定的な見方をする風潮が根強く、保存運動というものが起きにくい状態にあります。九大関連施設の今後が非常に心配です。

カクヤマ醤油
福岡市東区箱崎一丁目 昭和初期?
煉瓦造煙突+木造平屋建 不詳/不詳
/03.9/民間/醸造設備
 箱崎商店街に遺るどこにでもありそうな造り醤油屋さんの煙突。隣の建物がなくなってしまったことではっきりと見えていたのですが、ここもいつの間にか撤去。おおよそ地震以降の安全性確保のためと思われます。残念といえば残念ですけれども、やはり安全性には代え難いものがあり、複雑です。
 こういったどこにでもあるような煙突が、一番なくなりやすい事はおおよそ間違いではないでしょう。かくして箱崎の景観を造り上げていたであろう、この煙突も建物もなくなってしまいました。