二本煙突というと、地元のご年配の方でも田川伊田の煉瓦造大煙突を紹介しますが、華こそないもののこちらも立派な煙突。三井田川の中でも伊加利坑は最終期まで操業が行われていた炭鉱で、今でも若干の鉄筋コンクリート造り遺構が遺っています。これもそれらのうちのひとつです。
遺っているとはいえ、「保存」されている状況ではありません。これは筑豊に遺る多くの近代土木構造物に言えることです。「筑豊」は自らの足跡を消したがるように、その痕跡を次々とつぶしています。美的価値があまりない遺構はここ十年で全て消え去るかもしれません。
今は老朽化を以て取り壊しを論ずるときではないでしょう。自らの足跡を確かめるために、産業革命後の日本に住む私たちが、積極的にこれを遺すべき義務があるのではないでしょうか。(84.) |