近代化産業遺産 総合リスト


 
建物紹介例
<写真がここに入ります。(下は例)> 現在の建物名称(昔の建物名称)
住所(移設の場合、旧所在地) 建築年代
構造/階層 設計者/施工者
文化財指定・顕彰(ある場合)/撮影日/所有状況/
使用状況(建造当時の用途)
建物説明をくどくどと。(文末に参考文献ナンバー)

山口県山口市(山口地区)編

末宗邸(旧山口電信所)
山口市白石一丁目 明治5年(1872)
木造瓦葺/2階建 工務省/不詳
/03.10/民間所有/住居(事務所)
 街並みの中にとけ込んだ普通の古い住宅、というには少し趣がある感じがしますが、年代を見て納得もするものです。古さもここまで来ると自然でありながら、見る人にはっと感じさせる何かがあるようです。
 造られた年代が古すぎるため、当然かなりの改修が行われているものと考えられます。これだけ古い建物を活用していくためには、改修への配慮も当然必要になりますが、建物自体に改装に耐えうる余裕がなければ現在に残ることはないかと思います。そういった意味でこれは名建築の一つと考えるべきでしょう。(18.)

河村写真館(旧小野写真館)
山口市上竪小路 明治8年(1875)?
木造瓦葺/2階建 不詳/不詳
/03.10/民間所有/店舗(同左)
 赤い屋根とベランダのアーチが実に印象に残る建築です。その外観の華やかさとは異なり、建造当初の内部は完全な和風造りで、年代からいっても洋式建築というよりは、擬洋風建築というべき作品になっています。
 建造当時(明治8年としているが、諸説あり)は山口県出身の多くの政治家が見学に訪れたと言われています。たしかに、中央から遠く離れた地にこれだけ西洋へのあこがれを具現化できた建物もそう多くはないでしょう。後世に伝えるべき、貴重な生活文化財です。(18.)

山口ふるさと伝承総合センター・まなび館(旧野村家住宅)
山口市下竪小路 明治19年(1886)
木造/2階建 不詳/不詳
国登録有形文化財/03.10/山口市/公共施設(酒造場)
 歴史ある山口市の建築物の中でも萩往還に位置する、典型的な和風建築物です。ここでは山口の伝統技術を紹介し、保存しようという動きの下、公共施設として活用・運営されています。
 現在は未だ途上の感がありますが、将来的にはここを中心として山口市の重要な観光ルートとなっていくことが予想されます。鄙びた街並みを希望する方は今の内に訪れてみるのが一番かもしれません。(現地説明板.)

山口県政資料館(旧山口県庁舎)
山口市滝町 大正5年(1916)
煉瓦造/2階建 武田五一・大熊喜邦/大岩組
国指定重要文化財/03.10/山口県/資料館
 屋根についたドーマーの意匠に目を取られますが、この建物の一番のポイントは建物から中庭を望む景観です。まるでヨーロッパの洋館にいる様な錯覚を覚える完成された造りです。
 昭和59年には国の重要文化財に指定されていますが、これは近代建築の文化財指定の中ではかなり早期にあたります。それだけの質を持った建物であることが容易に判断できることでしょう。2階内装部の天井に特色があり、一部屋ごとにその様相を大きく変えています。入場無料ですので、一度訪れることを強くお薦めします。(18.) 

旧山口県議会議事堂(同左)
山口市滝町 大正5年(1916)
煉瓦造/2階建 武田五一・大熊喜邦/大岩組
国指定重要文化財/03.10/山口県/イベントホール(予定)
 平成16年に改装工事が終了し、イベントホールや展示室として使用されるとのこと。未だ内部を見ることは出来ませんが、そう遠くない将来一般公開されるものと思われます。さて、次は旧県庁舎修復になるものと思われます。
 改装工事は旧装を復元するためと保存のためのものです。このように近代化遺産に対する保護の動きが強まったのはつい最近のことです。これからもこの流れが強くなっていくことを望みます。(18.)

山口県立図書館旧維新記念室(旧県立教育博物館)
山口市春日町 大正6年(1917)
煉瓦造/平屋建 県土木課営繕係/不詳
/03.10/山口県/静態保存(展示施設)
 表通りから赤れんがの姿が見えるため、何の建物かと覗いてみたものの、図書館や博物館からは完全に棟が離れてしまい、また中を窺ってみるも何かの用途に使われているとはとうてい思えない寂れた印象を持ちました。
 今はただ活用の時を静かに待っているのではないかと思います。歴史ある山口のことですから、むげに壊してしまうことはないと思いますので。(18.)

クリエイティブ・スペース赤れんが(旧県立山口図書館書庫)
山口市中河原町 大正7年(1918)
煉瓦造/3階建 藤本勝住/不詳
国登録有形文化財/03.10/山口県/美術館(書庫)
 書庫という性質上当然窓は小さくなり、結果として赤れんがの素材の赤さが他の建築より余計に目立った結果となりました。特徴的な外観の魅力は確かな造りによるものです。地元の長きにわたる保存運動が実り、現在ではこのような現代美術の展示スペースとして使われています。
 活用の為に増築された部分は本体の魅力を損ねることなく、うまく景観に作用しているように感じます。本来彩色的に強いものであるはずの赤れんがが美しく映えるのは、歳月の重みだけでなく、本来の造形美も強く作用するのだと、改めて気づかされる建物です。(18.55.)

山口住まい・まちづくりセンター(旧桝本邸)
山口市銭湯小路
大正8年頃(1919)
木造/2階建 不詳/小山工務店
/03.10/民間/事務所
 角地にある姿は、個人邸宅と言うよりは、交番や商店建築に近いものがあります。少し前ならば、このような建物は全国の各所に残されていたはずなのですが、現在はこうやってわざわざ訪れる程の存在となりつつあります。普段よくあるもの、とぞんざいに扱ってきたものが、一番貴重なものへと変貌していく典型的例だと言えるでしょう。
 今後この流れはますます強くなっていくことでしょう。この建物がまちづくりの拠点となっていることは、建物の使い捨てを行ってきた戦後社会に対するある種の警告ではないでしょうか。(NPOまちのよそおいネットワークサイト.) 

山口県立山口高等学校記念館(旧制山口高等学校講堂)
山口市糸米一丁目 大正11年(1922)
木造/2階建 文部省(谷口鼎)/大岩組
国登録有形文化財/04.11/山口県/教育施設(同左)
 外観は少々時代錯誤とも思えるほど装飾性に溢れ、旧制高校が持つステータスを今に伝える教育施設。窓からちらりと見える内装も歴史の持つ雰囲気たっぷりの魅力的空間に見えました。
 外観に関しては旧制高校の中で一定の「決まり事」があったようで、車寄せ、両端の塔屋のような出っ張りなどがほかの旧制高校の講堂にもみられます。それらのなかでもこの施設は腰折れの破風などさらに目立たせるための仕掛けが多く、現在の高校内では一種異様な風景を形成しています。(18.55.)

山口県知事公舎(同左)
山口市水の上町 大正12年(1923)
木造瓦葺/2階建 不詳/不詳
/03.10/山口県/住宅(同左)
 ハーフティンバー調の2階部分と下見板張りの1階部分のコントラストが洋館としての魅力を引き立たせています。 
 山口県知事が使用していた建物ですので、当然中に入って内部を見ることは出来無かったのです。近くにある旧県庁・旧県議会議事堂とセットで見学することができれば申し分ない位置ですが、そういった希望もむなしく、あっけなくも取り壊されてしまったようです。山口県の考えていることが、私にはさっぱり分からなくなりました。(18.)

D60−1号機関車(旧9900−161機関車)
山口市春日町 昭和2年(1927)
D60形式蒸気機関車 不詳/川崎造船所
/03.10/JR西日本?/静態保存(機関車)
 全国各地に現在も少なからず残されている保存用SLのうちのひとつです。信号機も併置保存され、その保存状態も屋根がない割には見た所悪くないように感じます。
 プレートによると、この車輌は一度名称変更を行っており、D60型の第1号機関車として、昭和41年10月まで山口線で活躍していました。保存とはいっても、子供達に技術への関心が持てるよう、機関室を見る事ができるようになっています。その配慮には好感が持てます。(現地プレート.)

山口県春日山庁舎(旧山口県立図書館)
山口市春日町 昭和3年(1928)
鉄筋コンクリート造/3階建 県土木課営繕係/大林組
/03.10/山口県/庁舎(図書館)
 比較的広くとられた表通りからは木々に隠れているため、あまり全体像を見せていません。この木々も建物の創建当初はもっと小さいものであったに違い有りません。その幹の太さから、山口市都市計画の確かさが伺えます。
 公共建築であることを顕著に物語る威厳を持った建物です。側面から見ると、後に増築された部分を含めて実にダイナミックな構成を見せています。見る人によれば乱雑だと感じるかもしれませんが、私は表現力の顕現の一つのように思います。そういった意味でも外観からの見応えは充分です。(18.)

山口県立山口博物館防長先賢堂(旧県立教育博物館)
山口市春日町 昭和3年(1928)
鉄筋コンクリート造/平屋建 不詳/不詳
/03.10/山口県/公園付属施設(同左)
 同じように昭和3年に、ほぼ隣り合った敷地に造られた旧県図書館とは似ても似つかない、不思議な和風の意匠です。外壁の、校倉造りとも下見板張りともつかないモチーフ引用の凹凸や出窓のような側壁窓部、そして霊廟のような周囲の静けさ。色々な意味で忘れがたい建物だと感じました。
 見ようによれば、コンクリートを多用した現在の社寺関連施設の趨りともいうべき作りで、近代和風建築を考える上で重要な一里塚と言えるものではないでしょうか。専門家の意見を待ちたいと思います。(18.)

山口県警察体育館(旧大日本武徳会山口支部武徳殿)
山口市後河原片岡 昭和5年(1930)
木造瓦葺/平屋建 大日本武徳会山口支部/不詳
/03.10/山口県/武道場(同左)
 国道に面し交通量が多いため、見過ごされがちの建物ですが、現在も現役の武道場として利用されています。ただ、その外見から寺院のようにしか見えないのは、仕方ないといえばそうなのかもしれません。
 県庁やテレビ局と近接し、道幅も広いゆったりとした都市計画地域上にこのような建物があると、さては、区画整理に取り残された寺か、などと考えがちですが、この建物も戦争へと続く軍靴の足音をその存在で示してくれる、貴重な証拠であると言えるのでしょうか。(18.)

万代ミシン店(旧万代建材店)
山口市下竪小路 昭和初期
木造/2階建 不詳/不詳
/03.10/民間/店舗(同左)
萩往還に面した古くからの建物群に紛れてたたずむ建築です。現在もその所有を変えることなく、親しみの持てる民間店舗として営業中です。建物の形式としては、いわゆる「看板建築」の部類に属する、ファサード重視の建築物と言えるでしょう。
 建物単体でそれほどの魅力を感じる事はありませんが、街並みに長く存在している事で、その存在感を欠くべからざるものとして私達に印象づけています。歴史ある街並みは、このような建物の積み重ねによって出来上がるのでしょう。(18.)

山口市水道局宮島水源地ポンプ室(同左)
山口市宮島町 昭和10年(1935)
鉄筋コンクリート造/平屋建
(地下1階)
不詳/不詳
国登録有形文化財/04.11/山口市/水道施設(同左)
 昭和期の建造物にふさわしく、外壁はスクラッチタイル張りでアーチ窓、ポンプ場と一見判別しづらいたたずまいを持っています。
 こぢんまりとした外見から、本当に水道設備を持っているのかと疑ってしまいがちですが、地下にポンプ設備を内包しているとのこと。効率の良い内部計画を持って作られた施設だといえるでしょう。
 市街地から少々離れ、しかも周囲には観光になるような施設もないため、この施設単独で見に来る方は少ないでしょう。水道局に用事がある方は、少し足を止めて、その歴史にふれてみてください。(18.)


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